盛岡地方裁判所 昭和35年(行)6号 判決 1969年12月11日
盛岡市平戸五八番地
原告
株式会社 三一商事
右代表者代表清算人
盧成永
右訴訟代理人弁護士
岡林辰雄
同
榊原孝
同
石川克二郎
同市本町通三丁目八番三七号
被告
盛岡税務署長
石川兵一
右指定代理人
岸野祥一
同
高橋満夫
同
内野芳富
同
長谷川政司
同
鈴木昭平
同
加藤淳三
同
工藤行夫
右当事者間の課税処分取消請求事件について、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第一申立
原告は、「第一次的に、被告が原告に対し昭和三一年五月一九日付をもつてした昭和二七年度および昭和二八年度の法人税額、無申告加算税額、重加算税額の決定は無効であることを確認する。予備的に、右決定を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、被告は、主文同旨の判決を求めた。
第二請求の原因
一、原告は、登記簿上、食堂、遊技場(パチンコ等)の経営等を目的とする株式会社で、昭和二四年三月四日設立登記し、同三〇年一一月一六日に解散の登記をしている清算中の会社であるが、被告は、同三一年五月一九日付法人税額等の決定通知書をもつて原告の同二七年三月一日から同二八年二月二八日までの事業年度(以下、昭和二七年度という)および同年三月一日から同二九年二月二八日までの事業年度(以下、昭和二八年度という)の差引法人税額、無申告加算税額、重加算税額をそれぞれ別表一の各年度欄記載のとおり決定する旨原告に通知した(以下、右決定を本件課税処分という)。
二、そこで、原告は昭和三一年六月二日被告に対し再調査請求をしたところ、右請求は法人税法(昭和二二年法律第二八号の法人税法をいう。以下同じ。)第三五条第三項により同年七月二一日付で仙台国税局長に対する審査請求として処理され、同局長は、右請求書に証拠書類の添付がなく請求の方式に欠陥があるとして補正命令を発したうえ、原告が右補正命令に応じないとの理由で、同三五年一月二二日右請求を却下する旨の決定をなし、同日付でその旨原告に通知した。
三、しかしながら、本件課税処分は次の点において違法である。
1 他人の所得を原告の所得と認定課税していること
原告は、設立登記をしたことにより形式的には株式会社として存在するけれども、現実には出資がなされず、定期株主総会、取締役会等株式会社として活動の根源をなすべき機関も一度も活動せず、法定の諸帳簿の作成もしない実体のない名目だけの株式会社であり、また何らの営業活動もしていない。したがつて、原告の所得とみるべきものは全くない。飲食店営業、パチンコ店営業等本件課税処分において原告の営業と認められている一切の営業は、盧成永(日本名岡村重孝)、中原俊一、豊川光彦等個人の営業であり、被告の認定した本件課税処分の課税標準たる決定所得金額(別表一の決定所得金額欄記載のとおり)は、右各人の個人所得を原告の所得と誤認算定したものにはほかならない。
2 実質課税の原則に反すること
仮に、原告の名の下に営業がなされたとしても、その収益は原告に帰属せず、盧成永ら個人が享受していたのであるから、実質課税の原則(法人税法第七条の三)に基づいてこれらの者に対し課税すべきである。けだし、原告が収益を享受しているのであれば、役員の報酬、株の配当等がなされ、また、銀行預金等もすべて原告名でなされているはずであるが、被告が原告の収益と認定している大部分例えば銀行預金は、そのほとんどが盧成永もしくは同人の内妻岩淵ツネ子の個人名義でなされ、一部は無記名預金として盧成永が実権を掌握し、原告会社の解散後も会社の財産として処理されないで右個人のものとして消費されているのである。また、日常の営業においても、支出した残余金はすべて右両名の掌握するところであつた。すなわち、実質的に収益を享受しているのは盧成永等個人である。
3 所得金額の算出を誤り、原告の所得を過大に認定していること
(一) 仮に、前記主張がいずれも、理由がないとしても、本件課税処分はその所得金額の算出に誤りがある。被告は、原告提出の昭和二六年度(昭和二六年三月一日から同二七年二月二九日までの事業年度)確定申告書添付の同二七年二月二九日現在の貸借対照表を基礎として、これを調査の結果に基づいて修正し、その修正した貸借対照表(別表二の前同日現在欄記載)に基づいて係争事業年度の所得計算をしているのであるが、右原告提出の貸借対照表およびその基礎となつている財産目録、契約書(いずれも右確定申告に添付のもの)等の書類は、原告会社の収益を少くし、課税額を少くせんとして実体よりはるかに少く資産を見積つており、実体をそのまま記載したものではない。その顕著な例は、財産目録には建物一棟一三坪五合価格一五万円が計上されているにすぎないが、盧成永は、昭和二七年二月二九日現在右建物のほか、盛岡市馬場小路四番地家屋番号四番の二建坪三〇八坪(台帳六〇坪)評価額六四万二、六〇〇円を所有していた。また、盧成永と松本幸雄との間に、建物および機械器具を譲渡担保として金五〇万円を貸借する昭和二六年八月二七日付譲渡担保契約(乙第一五四号証)がなされているが、右契約は全く架空のものである。仮にしからずとしても、右借入金は貸借対照表の負債の部に計上されているのであるから、昭和二七年二月二九日現在で建物の所有権は未だ右松本に帰属せず、原告の資産として計上されるべきものである。加えて、被告は、盧成永、岩淵ツネ子等の個人財産、収入等を会社財産と正確に区別することなく、ほとんど大部分を漫然会社財産、収支と仮定独断して、前記原告作成の貸借対照表を修正している。原告会社は昭和二四年三月四日資本金二〇万円、一株の金額五〇万円、株式総数四〇〇〇株として設立登記されているけれども現実には全く出資がなされず、したがつて会社資産は皆無である。仮に、出資がなされたとしてもその種類、金額等は全く不明であるから、設立当初の会社財産は不明である。しかして、会社設立当初における会社資産が不明である以上、その後の会社運営により変動された会社の収支を明らかにすることはできないはずであるから、被告が、昭和二七年二月二九日現在の資産として計上している貸借対照表の数額は全く根拠がなく、これを財産増減法による次事業年度以降の所得計算の基礎とするのは誤りである。
(二) 被告は、その所得計算において、盧成永の収入は月二万円であり、これによつて同人の生活費がまかなわれ、貯蓄、その他は一切出来なかつたという前提に立つているが、同人の内妻岩淵ツネ子には家賃収入があり、それによつて生活費をまかない、盧成永の収入を貯蓄に廻すことが可能であつたし、交際費、旅費名義で盧成永に対し給料の数倍に当る金が支給されていたから、これによつて貯蓄することが可能であつた。したがつて、右盧成永、岩淵ツネ子らの資産の増加をもつて原告会社の収益の変形とみるのは誤りである。
(三) 原告は、釜石市、水沢市、青森市、大三沢市、秋田市、角舘市、東京都(品川)に営業所を有していたが、いずれも営業に失敗し負債を残した。被告は右各営業所の資産負債を差引零という前提に立つて何ら調査していないけれども、これらも財産増減法による所得計算において算入しなければならない。
四、以上の違法の瑕疵はいずれも明白かつ重大であるから、第一次的に本件課税処分の無効確認を求め、予備的にその取消を求める。
第三答弁
一、認否
請求の原因第一、二項の事実はすべて認める。
同第三項の1のうち、原告会社が設立登記をしたことは認めるが、その余は争う。同項の2のうち、銀行預金のほとんどが盧成永、岩淵ツネ子等個人名義でなされていることは認めるが、その余は争う。同項の3の(一)のうち、被告が本件課税処分において原告から提出された昭和二七年二月二九日現在の貸借対照表を基礎とし、これを調査の結果により修正して、その修正した貸借対照表に基づいて係争事業年度の所得計算をしていること、原告提出の貸借対照表およびこれに添付されている財産目録、契約書等が実体をそのまま記載していないこと、盧成永の松本幸雄からの借入金五〇万円を右修正貸借対照表の借入金に計上していること、原告会社につき原告主張の内容の設立登記がなされていることは認めるが、その余は争う、同(二)のうち、被告がその所得計算において、盧成永の月収を二万円とみていることは認めるが、その余は争う。同(三)は争う。
同第四項は争う。
二、被告の主張
1 本件課税処分の根拠
(一) 原告は、昭和二七年度および同二八年度の法人税の確定申告書を提出しなかつたので、被告が調査したところ、所得金額を算出するために必要な帳簿書類の備付が極めて不備で、右両事業年度の所得金額を損益計算法により算出するに足りる十分な帳簿書類がなかつた。そこで、被告は、原告の右両事業年度における所得金額を財産増減法により算出することとし、調査の結果に基づいてまず原告作成にかかる昭和二七年二月二九日現在の貸借付照表を別表二の右同日現在欄記載のように修正し、その修正した貸借対照表を基礎に、係争事業年度の各財産額の増減を調査し、右各事業年度期末現在の資産負債を別表二の貸借対照表の昭和二八年二月二八日現在欄、同二九年二月二八日現在欄記載のとおり確定して所得金額(別表二の貸借対照表の貸方科目の当期利益金)を算出した。別表二の計算の根基は別表三記載のとおりである。
別表二によれば、昭和二七年度の当期利益金は七八八万三三四〇円、同二八年度の当期利益金は一四三一万三七八八円となり、本件課税処分における決定所得金額昭和二七年度七一七万三三〇〇円、同二八年度一二一一万八三〇〇円をいずれも上回る所得を得ていたことなり、本件課税処分は実際の所得金額の範囲内でなされているのである。
(二) 右決定所得金額に対する法人税額、無申告加算税額、重加算税額の計算根基は別表四記載のとおりである。
無申告加算税の賦課決定処分は、原告が昭和二七、二八年度の両事業年度について、法人税の確定申告書を提出しなかつたことを根拠とするものであり、重加算税の賦課決定処分は、原告が税額の基礎となるべき事実を隠ぺい仮装したところに基づいて確定申告書を提出しなかつたことを根拠とするものである。すなわち、原告は係争事業年度を間にしてその前後の事業年度である昭和二五、二六年度、同二九年度については法人税の確定申告書を提出しているのに、係争事業年度についてはその申告をしないで右年度の原告会社の所得を廬成永、中原俊一、豊川光彦の三人の個人所得に分割して、右各人名義の昭和二八年分(同年一月一日から一二月三一日まで)所得税確定申告書を提出し、或いはまた、原告会社の収益によつて個人名義、架空人名義の預金をする等して法人税の基礎となるべき事実を隠ぺい仮装していたものである。
(三) なお、被告の所得計算について少しく説明するに、原告会社の代表取締役である盧成永の財産は、全額原告会社の事業に投じたものと認定して、原告会社の財産と区別することなく、貸借対照表において資本金または仮受金として計上した。原告会社設立後に同人が個人名義で取得した資産負債も、同人の給料は月二万円であり、これは生活費相当額でその都度消費されたものとみられるので、所得の計算上原告会社に帰属するものとみなした。岩淵ツネ子も無収入で盧成永の右収入に依存していたものとみられるので、原告会社設立前に同人が取得していた土地建物を除いては同人名義の資産負債も会社の資産負債として計上した。また、東洋物産有限会社、岩手県遊技場協同組合、東洋物産株式会社は、名目上は別会社になつているが、原告会社の不動産取得や景品仕入等のために便宜設立された会社であつて、原告会社と経理上の区別がなく事業主体は同一であるとみられるため、その資産負債も原告会社のものとして計上した。
2 原告主張の違法事由に対する反論
(一) 違法事由1に対し
原告会社は設立以降解散によつて営業活動を停止するまで全期間にわたり営業活動をしていたものである。原告会社は設立当初は盛岡市平戸五八番地(盛岡駅前)で食堂を経営していたが、昭和二六年九月に営業目的を変更して食堂経営等のほかに遊技場の経営をも目的とすることとなつたことに前後して、昭和二六年三月ごろからパチンコ遊技場の経営を始め、さらに同二七年五月ごろからパチンコ機械の製作を開始し、同二八年一〇月ごろには契茶部を、同年一一月ごろには撞球場を開設し、営業活動をなしていた(なお、原告会社解散後に、東洋観光株式会社が設立され、実質的に右原告会社の営業を引継いでいる)。パチンコ遊技場は、設立当初は盛岡駅前の営業所だけであつたが、昭和二六年一二月ごろ同市日影門外小路(通称、本店といつている)に、同二八年五月ごろ同市本町に、同年暮ごろ同市柳新道にそれぞれ町名を冠した原告会社の営業所を開設した。原告会社が営業活動をしていたことは右パチンコ等営業に関する外部との取引に原告会社名義が使用され、取引の相手方も原告会社を相手方と認識していること、盧成永は原告の社長として活動し、その他の役員、従業員も原告会社の営業として認識し、対外的に活動していること等によつて明らかである。前記各営業所が個人営業でないことは、各営業所の事業計画その他必要な方針をすべて原告会社本店で策定し、必要に応じて社長盧成永名義の文書をもつて各営業所の責任者等に指示していること、他方各営業所からは報告書を徴する等により、営業成績、従業員の勤務状況等をすべて原告会社本店において掌握する体制にあつたこと等により明らかである。これを要するに原告会社は営業活動をしており、原告が盧成永等個人の営業であると主張しているものはすべて原告会社の営業であり、本件課税処分が盧成永等個人の所得を原告の営業所得と誤認した違法があるとの主張は全く理由がない。なお、原告は、総会、取締役会等の機関が活動していないことを原告会社が営業活動をしていない証左として主張しているが、総会が開催されたことを認め得る資料があるのみならず、そもそも原告会社のように代表取締役の個人営業から会社組織にした同族会社では代表取締役のワンマン経営が多く、全ての機関が開催されることはむしろ稀なことであり、かかる機関が活動しなかつたことをもつては、原告会社が営業活動をしなかつたことの理由とはなし得ない。
(二) 違法事由2に対し
そもそも収益を享受しているとは、原告が主張するような配当支払の有無、預金者の名義、解散後の預金の処分、日常の剰余現金の掌握の事実により決定されるべきものではなく、事業の経営組織、事業目的、事業収益の管理状況、利益の処分権者、取引の状況、取引相手先の認識、内部組織等を総合勘案して判断すべきものである。本件においては、原告が、法律上も実体上も営業活動の主体であつたことは前項のとおりであり、その収益が法人に帰属していることは明らかな事実であるから、個人盧成永に帰属したとする原告の主張は当らない。たまたまその利益処分を盧成永および岩淵ツネ子が行なつていたとしても、それは設立当初から原告会社が盧成永のワンマン経営のもとに置かれていたことの結果であり、収益が個人に帰属したとする原因となるものでない。
(三) 違法事由3に対し
(1) 被告は、本件課税処分をする際に基礎とした原告作成の昭和二七年二月二九日現在の貸借対照表が原告主張のように実体をそのまま記載しているとは認められなかつたので、調査の結果に基づいて前同日現在の修正貸借対照表を作成し、それを基礎に別表二、同三のように同二八年二月二八日現在、同二九年二月二八日現在の所得を計算したのである。原告は、盛岡市馬場小路四番地、家屋番号四番の二の建物は、昭和二七年二月二九日現在の資産に計上されるべきであると主張するのであるが、当該建物は、同二八年度中に有坂本子外二名から取得したものであるから、その取得価額三六万五〇〇〇円は、昭和二九年二月二八日現在の資産に計上されるべきものである。また、原告は松本幸雄からの借入金五〇万円は架空であり、右松本との消費貸借に付随する建物および機械の売買契約は真実は譲渡担保契約であると主張するが、右主張は事実に反する。次に原告は、被告が原告作成の貸借対照表を修正するに当つて、盧成永等の個人財産、収入等と会社財産とを正確に区別しないでほとんど大部分を漫然会社財産、収支と仮定独断している旨主張するのであるが、被告は調査の結果に基づいて適正に認定したものであつて、原告がその論拠として主張するところはいずれも事実に反し全く理由がない。
(2) 原告は、盧成永の報酬、交際費、旅費の収入によつて貯蓄は何能であつたから盧成永、岩淵ツネ子の資産の増加はすべて会社の収益の変形ではないと主張するのであるが、交際費、旅費は実費弁償のものであり、個人の所得を形成するものではなく、仮に架空の支払であるとすれば、本来法人の利益を構成するものであるから、それによつて変形した資産は会社の所有に帰し、或いは個人に対する仮払金として資産を構成するものである。結局、調査の結果盧成永個人が給料以外に収入を得ていることが認められなかつたので、資産の増加はすべて会社の収益から構成されているものと認定したのであり、原告の主張は何ら理由がない。
(3) 原告は、釜石その他の営業所は営業に失敗し負債を残しており、これら負債を財産増減法による所得計算において算入しなかつたことは違法であると主張するが、釜石、東京の開店は昭和二九年二月以後であるから問題とならず、その他の営業所については、昭和二九年二月以前に開店していたとしても、本店が営業所の営業を指揮監督していた事実からその資産負債も本店において把握していたことが明らかであるが、調査の結果右各営業所の資産負債は認められなかつたのである。被告が原告主張の営業所(但し、備品などを資産に計上している大三沢を除く)の資産負債を零としているのはそのような趣旨であるから、所得計算上何ら誤りはない。
第四被告の右主張に対する原告の答弁
一、1の(一)のうち原告が昭和二七年度および同二八年度の法人税の確定申告書を提出しなかつたことは認める。別表二、別表三記載の数額、およびその計算根基は争う。同(二)のうち昭和二七年度および同二八年度の法人税の確定申告書を提出しなかつたことは認めるが、別表四記載の数額および決定所得金額の計算根基ならびに個人名義、架空人名義の預金を会社の収益によつてしていたとの点、法人税の基礎となるべき事実を隠ぺい仮装していたとの点は争う。同(三)は争う。
二、2の(一)のうち営業目的の変更については認めるがその余は争う。盛岡駅前食堂、同右パチンコ遊技場、同右パチンコ機械製作所、同右撞球場、日影門外小路パチンコ遊技場は岡村重孝、盛岡駅前契茶部は岩淵ツネ子、本町パチンコ遊技場は中原俊一、柳新道パチンコ遊技場は豊川光彦の各個人営業であつて原告会社の営業ではない。同(二)は争う。同(三)の(1)ないし(3)は争う。
第五証拠関係
原告は甲第一ないし第一八号証を提出し、証人全光鎬、同盧福永、同全尚鎬、同金洛竜、同岩淵ツネ子、同中原俊一(第一、二回)の証言ならびに原告代表者本人尋問(第一、二回)の結果を援用し、乙第一五四号証の成立を否認し、乙第一一号証、第一三号証の五、六、第一四号証の二、三、第一五号証の二、第一六号証の二、三、第一七、第一八号証の各二、第一九、第二〇、第三二号証の各一、二、第三四、第四二、第四九ないし第五三号証、第五四ないし第六四号証の各二、第六五号証の一、二、第六六号証の二、第六七号証の一、二、第六八ないし第七三号証、第七四、第七五号証の各二、第七七ないし第七九号証、第八〇号証の二、第八一、第八九、第一一六ないし第一一八、第一二〇号証、第一二五号証の一ないし三、第一二六号証の一、二、第一二九号証の二ないし二四、第一三五号証の一ないし五、同号証の六の一、二、同号証の七ないし一七、第一四二号証の一ないし一五、第一七四号証、第一七五号証の一ないし六、第一九三、第一九九、第二〇二ないし第二〇四号証、第二〇六号証の二ないし一三、第二〇七号証の一ないし六、第二〇八号証の一ないし二〇、第二〇九号証の一三ないし二三、同号証の二四の一、二、同号証の三一ないし七六、第二一五、第二一六号証の各一二、第二一七号証、第二一八、第二四八号証の各一、二、第二四九号証、第二五一、第二五二号証の各一、二、第二五七号証、第二六〇号証の二、第二七八、第二八三号証、第二八四号証の一、二、第二八七号証の一ないし四、第二八九号証の一ないし五、第二九〇号証の一ないし三、第二九一号証の一、二、第二九二号証、第二九六号証の一ないし三、第二九七ないし第二九九号証の各一、二、第三〇〇号証の一ないし一〇、第三〇一、第三〇二号証の各一ないし四、第三〇三号証の一、二、第三〇四、第三〇五号証の各一ないし三、第三〇六、第三〇七号証の各一、二、第三〇八号証の一ないし三、第三〇九、第三一〇号証の各一、二、第三一一号証の一ないし三、第三一二号証の一ないし五、第三一三、第三一四号証の各一、二、第三一五号証の一ないし三、第三一六ないし第三一九号証の各一、二、第三二〇、第三二一号証の各一ないし三、第三二二号証の一、二、第三二九号証、第四一六号証の一ないし三、第四二三号証、第四四二号証の一、二、第四四八号証の一ないし三の各成立ならびに乙第三三号証の三一商事本店の受付印岡村重孝の印影部分を除くその余の部分および乙第五四ないし第六四、第七四ないし第七六、第八〇号証の各一の郵便官署作成部分を除くその余の部分の各成立は不知、右乙第三三号証の三一商事本店の受付印、岡村重孝の印影部分および第五四ないし第六四、第七四ないし第七六、第八〇号証の各一の郵便官署作成部分の成立ならびにその余の乙号各証の成立を認めると述べた。
被告は、乙第一ないし第一二号証、第一三号証の一ないし六、第一四号証の一ないし三、第一五号証の一、二、第一六号証の一ないし三、第一七ないし第二〇号証の各一、二、第二一ないし第三一号証、第三二号証の一、二、第三三、第三四号証、第三五号の一、二、第三六号証の一ないし四、第三七号証の一ないし三、第三八、第三九号証の各一、二、第四〇号証、第四一号証の一ないし三、第四二号証、第四三、第四四号証の各一、二、第四五、第四六号証、第四七号証の一、二、第四八号証の一ないし三、第四九ないし第五三号証、第五四ないし第六七号証の各一、二、第六八ないし第七三号証、第七四ないし第七六号証の各一、二、第七七ないし第七九号証、第八〇号証の一、二、第八一号証、第八二ないし第八四号証の各一、二、第八五号証、第八六、第八七号証の各一、二、第八八ないし第九五号証、第九六号証の一、二、第九七ないし第一〇四号証、第一〇五号証の一、二、第一〇六、第一〇七号証、第一〇八、第一〇九号証の各一、二、第一一〇号証、第一一一ないし第一一四号証の各一、二、第一一五ないし第一二四号証、第一二五号証の一ないし三、第一二六号証の一、二、第一二七号証の一ないし八、第一二八号証の一ないし七、第一二九号証の一ないし二四、第一三〇ないし第一三四号証、第一三五号証の一ないし五、同号証の六の一、二、同号証の七ないし一七、第一三六、第一三七号証、第一三八号証の一ないし一四、第一三九号証、第一四〇号証の一ないし一四、第一四一号証の一ないし八、第一四二号証の一ないし一五、第一四三ないし第一四五号証、第一四六号証欠番、第一四七ないし第一五四号証、第一五五号証欠番、第一五六ないし第一六七号証の各一、二、第一六八号証欠番、第一六九、第一七〇号証の各一、二、第一七一ないし第一七四号証、第一七五号証の一ないし六、第一七六ないし第一八三号証、第一八四号証の一、二、第一八五ないし第一八七号証、第一八八号証の一ないし七、第一八九ないし第二〇五号証、第二〇六号証の一ないし一三、第二〇七号証の一ないし六、第二〇八号証の一ないし二〇、第二〇九号証の一ないし二三、同号証の二四の一、二、同号証の二五ないし九六、第二一〇ないし第二一四号証、第二一五、第二一六号証の各一、二、第二一七号証、第二一八ないし第二二八号証の各一、二、第二二九号証欠番、第二三〇ないし第二三二号証、第二三三ないし第二三七号証の各一、二、第二三八号証の一ないし三、第二三九号証の一、二、第二四〇号証の一ないし五、第二四一、第二四二号証、第二四三号証の一ないし三、第二四四号証の一ないし四、第二四五ないし第二四七号証、第二四八号証の一、二、第二四九、第二五〇号証、第二五一、第二五二号証の各一、二、第二五三号証、第二五四号証の一ないし四〇、第二五五号証の一ないし二一、第二五六ないし第二五九号証、第二六〇号証の一、二、第二六一ないし第二六三号証、第二六四、第二六五号証の各一、二、第二六六号証の一ないし六、第二六七号証の一ないし四〇、第二六八号証の一ないし一五、第二六九号証の一ないし四、第二七〇号証の一、二、第二七一ないし第二七六号証、第二七七号証の一ないし四、第二七八ないし第二八三号証、第二八四号証の一、二、第二八五、第二八六号証、第二八七号証の一ないし四、第二八八号証欠番、第二八九号証の一ないし五、第二九〇号証の一ないし三、第二九一号証の一、二、第二九二号証、第二九三号証の一ないし四、第二九四号証、第二九五号証の一、二、第二九六号証の一ないし三、第二九七ないし第二九九号証の各一、二、第三〇〇号証の一ないし一〇、第三〇一、第三〇二号証の各一ないし四、第三〇三号証の一、二、第三〇四、第三〇五号証の一ないし三、第三〇六、第三〇七号証の各一、二、第三〇八号証の一ないし三、第三〇九、第三一〇号証の各一、二、第三一一号証の一ないし三、第三一二号証の一ないし五、第三一三、第三一四号証の各一、二、第三一五号証の一ないし三、第三一六ないし第三一九号証の各一、二、第三二〇、第三二一号証の各一ないし三、第三二二号証の一、二、第三二三号証の一ないし三、第三二四ないし第三四五号証、第三四六号証の一の一ないし六、同号証の二ないし四、第三四七ないし第四一五号証、第四一六号証の一ないし三、第四一七ないし第四二四号証、第四二五号証の一ないし三、第四二六ないし第四四〇号証、第四四一号証の一、二、第四四二号証の一ないし二九、第四四三号証の一ないし一六、第四四四号証の一ないし一〇、第四四五号証の一、二、第四四六号証の一ないし六、第四四七号証の一ないし一一、第四四八号証の一ないし三、第四四九ないし第四五五号証を提出し、証人仁科誠三、同佐藤幹夫の証言を援用し、甲号各証の成立を認めると述べた。
理由
一、請求原因第一、二項の事実は当事者間に争いがない。
二、本件課税処分の適否
1 原告主張の違法事由1について
被告は、本件課税処分において、原告会社を営業活動の主体と認定しこれを前提にして課税しているものであるが、原告はこれを争い、被告が原告の営業と認定している一切の営業は盧成永等個人の営業であり、原告会社は実体のない名目だけの会社であつて何らの営業活動もしておらず、本件課税処分は、盧成永等個人の所得を原告の所得と誤認してなされたものと主張するので、この点につき判断するに、成立に争いのない甲第三ないし第一〇、第一五ないし第一八号証、乙第一〇号証、第一四ないし第一八号証の各一、第二一ないし第三一号証、第三五号証の一、二、第三六号証の一ないし四、第三七号証の一ないし三、第三八、第三九号証の各一、二、第四〇号証、第四一号証の一ないし三、第四二号証、第四三、第四四号証の各一、二、第四五、第四六号証、第四七号証の一、二、第四八号証の一ないし三、第六六号証の一、第七六号証の二、第八二ないし第八四号証の各一、二、第八五号証、第八六、第八七号証の各一、二、第八八号証、第九〇ないし第九五号証、第九六号証の一、二、第九七ないし第一〇四号証、第一〇五号証の一、二、第一〇六、第一〇七号証、第一〇八、第一〇九号証の各一、二、第一一〇号証、第一一一ないし第一一四号証の各一、二、第一一五、第一一九、第一二一ないし第一二三号証、第一三八号証の一ないし一四、第一七六、第二一〇、第二一三、第二五九、第三二八、第三三〇、第三三一号証、第三四六号証の三、第三五四ないし第三五九、第三六二、第三六四ないし第三六九、第三七一、第三八〇、第三八六、第三八七、第三九一、第三九四、第三九八、第四〇三、第四〇四、第四〇六、第四〇八ないし第四一〇、第四一三、第四一四、第四三二ないし第四三四、第四五〇ないし第四五三号証、前記乙第一四号証の一により成立を認める同号証の二、三、前記乙第一五号証の一により成立を認める同号証の二、前記乙第一六号証の一により成立を認める同号証の二、三、前記乙第一七号証の一により成立を認める同号証の二、成立に争いのない乙第四二四号証により成立を認める乙第一九、第二〇、第三二号証の各一、二、第三三(但し、受付印岡村重孝の印影部分は成立に争いがない)、第三四、第四二、第五〇ないし第五二号証、第五九、第六一、第六二号証の各一(但し、郵便官署作成部分は成立に争いがない)、二、第六七号証の一、二、第六八号証、第七五、第七六号証の各一(但し、郵便官署作成部分は成立に争いがない)、二、前記乙第三五四号証により成立を認める乙第四九号証、前記乙第三五五号証により成立を認める乙第五三号証、第二一六号証の一、二、前記乙第三五六号証により成立を認める乙第五四号証の一(但し、郵便官署作成部分は成立に争いがない)、二、前記乙第三五七号証により成立を認める乙第五五号証の一(但し、郵便官署作成部分は成立に争いがない)、二、前記乙第三五八号証により成立を認める乙第五六号証の一(但し、郵便官署作成部分は成立に争いがない)、二、第三一七号証の一、二、前記乙第三五九号証により成立を認める乙第五七、第七四号証の各一(但し、郵便官署作成部分は成立に争いがない)、二、前記乙第三六〇号証により成立を認める乙第五八号証の一(但し郵便官署作成部分は成立に争いがない)二、前記乙第三六一号証により成立を認める乙第六〇号証の一(但し、郵便官署作成部分は成立に争がない)二、前記乙第三六二号証により成立を認める乙第六三号証の一(但し、郵便官署作成部分は成立に争いがない)二、前記乙第三六三号証により成立を認める乙第六四号証の一(但し、郵便官署作成部分は成立に争いがない)二、前記乙第三六四号証により成立を認める乙第六五号証の一、二、第三二〇号証の一ないし三、前記乙第三六五号証により成立を認める乙第六六号証の二、前記乙第三六六号証により成立を認める乙第六九、第七〇、第七八号証、前記乙第三六七号証により成立を認める乙第七一号証、前記乙第三六八号証により成立を認める乙第七二号証、前記乙第三六九号証により成立を認める乙第七三号証、前記乙第三七〇号証により成立を認める乙第七七号証、前記乙第三七一号証により成立を認める乙第八〇号証の一(但し、郵便官署作成部分は成立に争いがない)、二、前記乙第三七三号証により成立を認める乙第八一号証、前記乙第三七七号証により成立を認める乙第八九号証、第三一五号証の一ないし三、前記乙第三八一号証により成立を認める乙第一一六ないし第一一八号証、前記乙第三七六号証により成立を認める乙第一二〇号証、前記乙第三八七号証により成立を認める乙第二一五号証の一、二、前記乙第三八六号証により成立を認める乙第二一七証、前記乙第三九一号証により成立を認める乙第二八四、第三一六号証の各一、二、前記乙第三九七号証により成立を認める乙第三〇一の一ないし四、前記乙第四〇三号証により成立を認める乙第三〇七号証の一、二、前記乙第四〇四号証により成立を認める乙第三〇八号証の一ないし三、前記乙第四〇五号証により成立を認める乙第三〇九号証の一、二、前記乙第四〇六号証により成立を認める乙第三一〇号証の一、二、前記乙第四〇八号証により成立を認める乙第三一二号証の一ないし五、前記乙第四〇九号証により成立を認める乙第三一三号証の一、二、前記乙第四一〇号証により成立を認める乙第三一四号証の一ないし五、前記乙第四一一号証により成立を認める乙第三一八号証の一、二、前記乙第四一三号証により成立を認める乙第三二一号証の一ないし三、前記乙第四一四号証により成立を認める乙第三二二号証の一、二、証人仁科誠三、同全光鎬、同盧福永、同全尚鎬、同金洛竜、同中原俊一、(第一、二回)の各証言ならびに原告代表者本人尋問(第一、二回)の結果を総合すると、次の事実を認めることができる。
原告会社設立前、盧成永は、盛岡市平戸五八番地(盛岡駅前)で主として食堂を個人経営していたが、右個人経営を株式会社組織に改めることを企て、昭和二四年三月四日右の場所を本店として設立登記手続を経て原告会社を設立し、自ら右会社の代表取締役に就任した。原告会社の株主は盧成永のほか数名あるが、盧成永以外の株主は形式的な存在にすぎず、右会社の経営資金は、実質的には殆ど盧成永の出資によるものであり、経営上の実権も盧成永がすべて掌握していた。ところで、原告会社は、設立当初食堂の経営、食料品の加工、瓦斯、薪の製造販売、木工品製造販売および以上の営業に附帯する業務を営業目的としていたが、昭和二六年九月、右営業目的を変更して食料品の加工に代え遊技場の経営を営業目的に加えた。右営業目的の変更に前後して原告会社名と町名を冠したパチンコ遊技場(例えば、三一本町遊技場の如く)が、盛岡駅前(食堂跡に)、日影門外小路(通称本店)、本町、柳新道および市外の水沢、大三沢、八戸、青森、釜石、秋田、角館、東京(品川)に順次開設され、また、右パチンコ遊技場とならんでパチンコ器の製作所、喫茶部、撞球場が開設された。右遊技場等は風俗営業許可名義、入場税の納税者名義が岡村重孝(盧成永)、中原俊一(昭和二六年のパチンコ遊技場開設に前後して盧成永の経営に協力するようになつていた)、豊川光彦の個人名義になつていたが、実質的には原告会社の営業所として経営管理されていたものであり、右中原、豊川は原告会社の従業員という地位にあるにすぎない。原告会社はその営業上の取引(銀行取引、営業所建物の賃貸借をも含める)を原告会社名義でなしていたものであり、その帳簿書類、指示文書、その他の諸連絡にも原告会社名を使用し、盧成永がそれらの文書に社長として決裁していた。したがつて、原告会社従業員はもちろんのこと、取引先や関係官庁も、パチンコ遊技場等経営を原告会社の営業と認識していた。なお、原告会社は、係争事業年度に先立つ昭和二五、二六年度および係争事業年度後である同二九年度において、遊技場等経営による営業所得を原告会社の所得として法人税の確定申告をしており、また、原告会社解散後の昭和三〇年一二月二日に観光地の宣伝等のほか、遊技場、キヤバレー、喫茶店、撞球場等の経営を目的とする東洋観光株式会社が設立され、右会社が原告会社の営業を実質的に引き継いでいる。
以上のように認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
右事実によれば、原告会社は、実質的には盧成永の個人経営企業と異なるところのないいわゆる個人会社ではあるが、盧成永は前記パチンコ遊技場、撞球場を株式会社形態を利用し、原告会社の営業所として営業活動をしていたものであり、右原告会社は外部的にも、内部的にも営業の主体として認識され、税法上営業活動による収益の享受者としての実体を有していたことが認められる。前記認定の各営業所の営業が原告主張のように盧成永、中原俊一、豊川光彦の個人営業であるとは到底認め難いところである。原告は現実に出資がなされていないこと、株主総会、取締役会が一度も開かれていないこと、法定の諸帳簿が作成されていないことなどをあげて、原告会社は名目だけの会社であり、したがつて営業活動の主体ではないと主張するのであるが、現実に出資がなされていると認められることは後記判断のとおりであり、その余の点については、わが国において、実体が個人企業と異なるところのない名前ばかりの弱小株式会社に多く見られる現象であつて、それは、当該会社において商法の規定に従つた運営がなされていないということを意味するにすぎず、そのことによつて会社の存在や活動が否定されることにはならず、およそ定款の認証と設立登記によつて法律上形式的に会社の存在が認められ、その会社が営業活動をしたものと認め得る以上、その実体が個人企業であるか否か、商法の規定に従つた運営がなされているか否かにかかわりなく、税法上、法人の営業としての取扱いを受けるものであるから、右主張は理由がない。
したがつて、原告会社を遊技場等経営の営業の主体と認定し、名義が個人名義となつているか否かにかかわらずその営業活動により生じた資産負債を調査確認し、所得計算をしている本件課税処分には、原告主張のような違法は存しない。
2 原告主張の違法事由2について
原告は盧成永をもつて前記遊技場等経営による収益の享受者であるとし、本件課税処分は、実質課税の原則に反すると主張する。右主張は、原告会社が盧成永の個人企業としての実体を有する点に着目した主張であることは疑いがなく、右実体に照らせば盧成永が原告会社の営業収益を終局的に享受する者であることを肯定し得ない訳ではない。しかしながら、終局的に収益を享受する者が何人であるかということは実質課税の原則と直接の関係を有するものでなく、前記判断のように営業活動の主体がすなわちその営業による収益の帰属者であるとの認識(営業活動により取得する財物の形式的な帰属を問題としないで)が本原則の正しい適用を示すものにほかならない。原告の主張は失当である。
3 原告主張の違法事由3について
(一) 原告が、昭和二七、二八年度の法人税の確定申告書を提出しなかつたことは当事者間に争いがなく、また、原告が右両事業年度の所得金額を損益計算法により算出するに足りるだけの帳簿書類を所持していなかつたことは原告の明らかに争わないところであるから、被告が右両事業年度の所得金額を財産増減法により算出する方法をとつたことは相当として是認することができる。そこで、以下、別表二の計算根基である別表三にしたがい、係争事業年度の期首金額となる昭和二七年二月二九日現在の資産負債および係争事業年度各期末現在の資産負債を確定し、被告の所得計算が正当か否かを順次検討する。
(二) ところで、被告は、原告会社の営業活動により生じた資産負債を、その取得名義如何にかかわらず原告会社に帰属する資産負債と認定し、これを前提にして所得計算をしており、その正当なことは前記判断のとおりであるが、被告は、なお右所得計算において原告会社の代表取締役である盧成永の財産を全額会社の事業に投じたものとみてこれを資本金或いは仮受金として計上し、また、同人および岩淵ツネ子が原告会社設立後にその個人名義で取得した資産負債もすべて原告会社の営業活動によるものとして原告会社の資産負債に計上しているので、その計算方法が正当か否かをあらかじめ検討する。しかるところ、前記認定のとおり、盧成永はそれまでの個人としての営業を株式会社組織に改め、原告会社を設立して、その代表取締役としての地位において遊技場の経営等の営業活動をしていたものであること、前記乙第三六、第三七号証の各三、成立に争いのない乙第一三七号証、第三四四号証によれば、盧成永は、原告会社から月額二万円の給料を支給されていることが認められるところ、被告は盧成永が昭和二六年ごろまで個人の事業としてなしていた菓子製造、養豚の事業による収益を仮受金として計上していること後記認定のとおりであるから、右給料が、原告会社設立後の盧成永の唯一の収入源とみて差支えないこと、岩淵ツネ子は、後記認定のとおり本店店舗の建物を原告会社に賃貸しているが、右家賃は未払となつており、また、前記乙第一二三、第三四四号証によれば同人が昭和二八年五月ごろに設立した文化プレイガイド社も収益があがらず、同人には他に収入がなく、盧成永の内妻として同人にその生活を依存しており、一ケ月の同人らの生活費は約五万円であつたことが認められ、右各事実を総合すれば、盧成永、岩淵ツネ子についての被告の所得計算上の処理は、合理的な理由があるものということができる(もつとも、昭和二七年二月二九日現在の貸借対照表上、盧成永の所有にかかる建物の一部が計上されていないことは後記認定のとおりである。被告の所得計算上の建前からすれば右建物を資産に計上し、それに対応して負債科目に資本金或いは仮受金として建物価額相当額が計上されることになるであろう。しかし、次事業年度以降に右逸脱した建物が計上されない限り、財産増減法による所得計算上影響がない(被告の所得計算上は、別途仮受金によつて調整される。)から被告の所得計算を不合理ならしめることはない。)したがつて、以下の資産負債の判断においては、パチンコ遊技場の営業に関係したものであつて原告会社に帰属することが明白なもののほか、盧成永および岩淵ツネ子名義の資産負債については、原告会社に帰属するか否かの判断を原則として省略することとする。
(三) 次に、原告は、釜石、水沢、青森、大三沢、秋田、角館、東京(品川)に所在する原告会社の営業所は、営業に失敗し負債を残したが、被告は本件所得計算において何らこれを考慮していないと主張し、被告は、備品等を資産に計上している大三沢営業所を除き、右各営業所の資産負債を表面的には零として計上し、盛岡市内の営業所を中心にして所得計算をしていることを自認するので右のような処理が相当であつたか否かを検討するに、前記乙第二一、第一二一、第一二四、第二一三号証、成立に争いのない乙第四一七号証によれば東京(品川)営業所は、係争事業年度後である昭和二九年六月ごろ、釜石は同年三月ごろの開店であることが認められるから、右各営業所の資産負債を本件の所得計算上考慮しなかつたことは当然であるし、また、前記乙第一二一、第二一〇、第二一三号証、証人中原俊一(第一回)の証言によれば、大三沢、水沢の各営業所は、いずれも係争事業年度内に開店されているけれども、係争事業年度後においても営業を継続(水沢営業所は一時第三者が経営していた)していることが認められるので、仮に負債があつたとしても、係争事業年度内に生じていた負債を確定する資料がなければならないが、本件においては右のような資料は存しない。そのほかの営業所については前記乙第二一〇、第二一三号証、成立に争いのない乙第三二六号証、証人中原俊一(第一回)の証言ならびに原告代表者本人尋問(第一回)の結果によれば、いずれの営業所も三ないし一〇ケ月程度で閉鎖しなければならないような経営状態で、いわゆる赤字経営であつたことが認められるが、前記認定のように、右各営業所は原告会社の営業所として管理運営されていたのであるから、右営業所の損益が原告会社本店を中心とする盛岡市内の営業所を主にして算出している被告の所得計算に反映していることが十分推認される(例えば、計上されない原告主張の営業所の資産は、被告の貸借対照表上備品、預金等資産の減少或いは借入金、買掛金等負債の増加という形で反映する)ばかりでなく、資産を上回つた負債を生じない限り右営業所の資産負債を差引零として計算した方が原告に有利である。しかるところ、資産を上回る損失の存在については前掲証拠によるも未だ認めるに足りず、ほかに右損失の存在を認めうる資料がない。したがつて、原告主張の各営業所の資産負債を差引零として処理している被告の所得計算は、結局何らの不合理もないといわねばならない。
(四) 昭和二七年二月二九日現在の資産負債
(1) 資産
現金
前記乙第一二〇ないし第一二三号証、成立に争いのない甲第一八号証、証人仁科誠三の証言および同証言によつて成立を認める乙第四二三号証、証人中原俊一(第一回)、同岩淵ツネ子の証言によれば、原告会社においては当日の各営業所の売上を本店に持参し、翌日銀行に預金することが慣例であること、昭和二七年三月一日預入れにかかる預金額は金一一万であること、したがつて同年二月二九日現在の手持現金高は一一万円であることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
銀行預金
前記乙第一二一ないし第一二三、第四二三号証、成立に争いのない乙第一二七号証の一ないし八、第一二八号証の一ないし四、第一三〇ないし第一三四号証、第四四二号証の三ないし二三、以下いずれも成立に争いのない乙第三七六号証により成立を認める乙第一二五号証の一ないし三、乙第三八二号証により成立を認める乙第一二六号証の一、二、乙第一二九号証により成立を認める同号証の一ないし二四、乙第一八〇号証により成立を認める乙第一三五号証の二、証人仁科誠三、同岩淵ツネ子の各証言によれば、原告会社の営業収益による銀行預金は、普通、当座、無尽、無記名定期併せて二五〇万五一五七円、右預金額から控除すべき昭和二七年二月二九日現在の未達小切手金額は九万〇七七〇円(内訳はいずれも別表三の当該勘定科目摘要欄記載のとおり)であり、差引期末金額は二四一万四三八七円であること、右預金のうち上山忠一名義の預金は架空人名義であることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。原告は、盧成永は交際費、旅費名義で給料の数倍に当る報酬を支給されていたから、これによつて預金することが可能であり、盧成永、岩淵ツネ子名義の預金をすべて原告会社に帰属するものと認定しているのは不当であると主張するけれども、実費を上回る右のような名義の収入によつてなされている預金があるとすれば、それは原告会社の収益の変形とみて差支えないから右主張は失当である。
売掛金
前記乙第四二三号証、成立に争いのない乙第一三六、第一三七号証、第一三八号証の六、七、証人仁科誠三、同中原俊一(第二回)の証言によれば、昭和二七年二月二九日現在の売掛金は、原告会社が設立当初に経営していた食堂関係に金四万四〇一〇円存することが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
仮払金、予納金、景品在庫(パチンコ景品)、原材料
前記乙第一三六号証、第一三八号証の六、第四二三号証、証人仁科誠三の証言によれば、昭和二七年二月二九日現在の公表金額(原告が提出している昭和二五、二六年度の確定申告書において自認している金額)は、仮払金が三五万三八七〇円、予納金が一万七九九〇円、景品在庫(パチンコ景品)が九万〇二六三円、原材料在庫が三万六七一一円であることが認められるところ、右公表金額を否定するに足りる資料はないから、右公表金額を採用して、期末現在高を確定するのが相当である。
パチンコ玉
前記乙第一三八号証、第一三八号証の七、第四二三号証、証人仁科誠三の証言によれば、昭和二七年二月二九日現在のパチンコ玉の在庫は一一万二〇〇〇個で価額一二万三二〇〇円(単価一円一〇銭)であることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
建物
前記乙第一三八号証の六、七、第四二三号証、成立に争いのない甲第一号証、乙第一四八号証、証人仁科誠三、同中原俊一(第一、二回)の証言ならびに原告代表者本人尋問(第一、二回)の結果によれば、駅前営業所の建物の大部分は、原告会社設立前に建てられた盧成永個人の建物であるが、右建物のうち増改築部分(約一四坪五合)は原告会社の営業収益によつて増改築したもので、実質的には原告会社の建物であり、その価額は一五万円であることが認められ、前記証人中原俊一(第一、二回)の証言および原告代表者本人尋問(第一、二回)の結果中右認定に反する部分は信用できず、ほかに右認定を覆すに足りる証拠はない。ところで、原告は、昭和二七年二月二九日現在盧成永は右建物の外に盛岡市馬場小路四番地家屋番号四番の二建坪三〇八坪(台帳面積六〇坪)評価額六四万二六〇〇円を所有しており、右建物も前同日現在の原告会社の資産に計上すべきであると主張し、成立に争いのない甲第二号証、証人中原俊一(第一、二回)、原告代表者本人尋問(第一、二回)の結果によれば右主張事実を認めることができる。そして、右建物は、駅前営業所の増築部分を除く建物とともに、原告会社設立前から存在した建物であることが前掲証拠により認められるから、右各建物は、被告の所得計算上の建前からは資産に計上し、これに対応する金額を資本金または仮受金に計上しなければならないものであること前記のとおりである。しかしながら、右逸脱した建物は次事業年度以降の資産に計上されていない(別表三の昭和二九年二月二八日現在資産科目建物中に計上されている有坂尚から取得の同番地所在の建物は、後記認定のように昭和二八年度中に取得した前記建物とは全く別個の建物(同一敷地内に近接して建てられている)であり、原告代表者本人尋問(第二回)の結果もこれを認めている)。それ故、前記のように財産増減法による所得計算上影響をきたさないから被告の所得計算を不合理(期首に計上すべき資産を計上しないで期末に計上すると不当な益金を生ずる)ならしめることはない。
次に、原告は、盧成永と松本幸雄との金銭消費貸借ならびにそれに付随する昭和二六年八月二七日付建物(盛岡市馬場小路四番地の工場、住宅であるが、原告主張の前記同番地上の建物と同一か否か明らかでない)および機械の売買契約は架空であり、仮に然らずとしても、譲渡担保契約であるから右借入金を同二七年二月二九日現在の貸借対照表に計上する以上、右建物、機械も前同日現在の資産に計上すべきであると主張する。しかし、仮に、原告主張のとおりであるとしても、後記別途仮受金によつて調整されることになるから所得計算上影響がなく、また、右建物、機械が次事業年度以降に資産に計上されていないことは後記判断によつて明らかであるから、前記建物と同じよううに所得計算を不合理ならしめる関係になく、したがつて、原告の主張事実について判断するまでもなく、右主張は失当として排斥を免れない。
建物附属設備
前記乙第一三八号証の六、七、第四二三号証、成立に争いのない乙第一三九号証、証人仁科誠三の証言によれば、被告が、建物附属設備として計上しているのは、原告会社が岩淵ツネ子から賃借している同人所有の盛岡市日強門外小路一四七番地所在の本店営業所の建物の改築費であるが、その額は四七万八〇四八円であることが認められる(なお、被告は右改築費を次事業年度以降建物として計上している。しかし、所得計算上はいずれの勘定科目に計上しても影響がない。)、
備品(パチンコ器)
前記乙第一三七号証、第一三八号証の七、第四二三号証、成立に争いのない乙第一四〇号証の一、二、証人仁科誠三の証言によれば、昭和二七年二月二九日現在のパチンコ器の在庫は一九七台、その取得価額は一〇二万四四〇〇円(単価五二〇〇円)であることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。そして、右取得価額から控除すべき当期減価償却費相当額は相当法条を適用し算出すると四三万三九二九円となるから、差引期末金額は五九万〇四七一円である。
備品(その他)
前記乙第四二三号証、成立に争いのない乙第一四一号証の一ないし四、証人仁科誠三、同佐藤幹夫の証言によれば、被告が備品として計上しているのはマイクロホン、時計であるが、原告会社は右マイクロホンを昭和二七年一月一五日に二万一五〇〇円で、同年同月三〇日に右時計を四〇〇〇円でそれぞれ取得したものであることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。右取得価額から控除すべき当期減価償却費相当額は相当法条を適用し算出すると八七五円となるから、差引期末金額は二万四六二五円となる。
車両運搬具
前記乙第一四一号証の三、第四二三号証、証人仁科誠三、同佐藤幹夫の証言によれば、昭和二七年二月二九日現在の在庫は自転車一台であり、右自転車は同年一月一七日に二万五〇〇〇円で取得したものであることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。右取得価額から控除すべき当期減価償却費相当額は相当法条を適用し算出すると一八二五円となるから、差引期末金額は二万三一七五円となる。
未経過利息
前記乙第四二三号証、成立に争いのない乙第一四三号証、成立に争いのない乙第三七六号証によつて成立を認める乙第一四二号証の一ないし一五、証人仁科誠三の証言によれば、原告会社は昭和二七年一月一四日、興産相互銀行に対し、利息日歩二銭の約定による岩淵ツネ子名義の借入金五〇万円について前同日から同年三月一四日までの利息金六〇〇〇円を支払つており、右支払利息のうち当期末経過分すなわち三月一日から同月一四日までの利息は一四〇〇円であることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。右借入金は岩淵ツネ子名義であるが、前記認定のように実質的には原告会社の借入金と認むべきものであり、また、利息の支払は、原告会社の営業収益によつてなされたものであることは明らかである。右未経過利息は、実質的には前払金の性格をもつものであり、もとより資産に計上すべきものである。
未経過保険料
前記乙第一一九、第四二三号証、証人仁科誠三の証言によれば、岩淵ツネ子は、同人と日新火災海上保険株式会社との間の火災保険契約に基づき、昭和二七年二月六日、同人所有の盛岡市日影門外小路一四七番地の一二外一筆地上にある建物(原告会社の本店営業所の建物で前記のように原告会社が岩淵ツネ子から賃借している建物であり、右建物の一部改築部分は建物附属設備として前記のように資産に計上している)の保険料三万六八〇〇円(保険金額二〇〇万円)を支払つており、右保険期間は同年二月六日から同二八年二月六日までであるから、同二七年三月一日より同二八年二月六日までの当期未経過分の支払済保険料の額は三万四四八七円となることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。そして、前記未経過利息と同様の理由により原告会社の収益によつて右保険料が支払われたものと認められるから、未経過保険料は、原告会社の岩淵ツネ子に対する立替金という趣旨において原告会社の資産に計上すべきである。
以上昭和二七年二月二九日現在の資産の合計は四四九万二六三七円となる。
(2) 負債
買掛金
前記乙第一三六号証、第一三八号証の六、第四二三号証、証人仁科誠三の証言によれば、昭和二七年二月二九日現在の原告会社の買掛金は四五〇〇円であることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
未払金
前記認定のように、原告会社は岩淵ツネ子から本店営業所として使用している建物を賃借しているが、前記乙第一一九、第一三一、第四二三号証、証人仁科誠三の証言によれば、右建物の家賃月二万五〇〇〇円は賃貸借契約が締結された昭和二六年一二月二〇日以降支払がなされず、同二七年二月二九日現在、同二六年一二月から同二七年一二月までの三ヶ月分の家賃合計七万五〇〇〇円が未払となつていることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
未払税金
前記乙第四二三号証、成立に争いのない乙第一四七号証、証人仁科誠三の証言によれば、昭和二七年二月二九日現在納税者岡村重孝名義の遊技場の入場税(入場税法(昭和二九年法律第九六号)施行前の地方税法(昭和二九年法律第九五号による改正前)による入場税)一一万六五四一円(内訳は別表三の当該勘定科目摘要欄記載のとおり)が未納であることが認められる。納税者名義は個人名義であるが実質的な納税者を原告とみるべきことは前記判断のとおりである。
未払利息
前記乙第一四三、第四二三号証、成立に争いのない乙第三七六号証によつて成立を認める乙第一四二号証の一ないし一五、証人仁科誠三の証言によれば、昭和二七年二月二九日現在興産相互銀行本店からの同年一月二五日付岩淵ツネ子名義の借入金五〇万円につき、日歩三銭三厘の利率による同年二月一日から期末までの利息四七八五円が未払となつていることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。右借入金が実質的には原告会社の借入金とみるべきことは前記判断のとおりである。
仮受金
前記乙第一三六号証、第一三八号証の六、第四二三号証、証人仁科誠三の証言によれば、昭和二七年二月二九日現在原告会社は寒河式パチンコ機械の代理店である関係で、右パチンコ機械の得意先から買入代金三六万二〇〇〇円を預かつており、被告はこれを仮受金として計上したものであることが認められ、右認定に反する証人中原俊一(第一回)の証言は信用できず、ほかに右認定を覆すに足りる証拠はない。
仮受金(岡村重孝)
前記乙第一二三、第四二三号証、成立に争いのない乙第一四七ないし第一五二号証、証人仁科誠三の証言ならびに原告代表者本人尋問(第一回)の結果によれば、盧成永は昭和二六年ごろまで個人の事業としてなしていた菓子製造、養豚の事業により三〇〇万円程の収益をあげ、その後キヤラメルの製造で五〇万円の損失を出したが、差引二五〇万円の手持現金を有し、そのうち当該事業年度において九〇万円を原告会社の事業に投じたことが認められ、右認定に反する原告代表者本人尋問(第二回)の結果は信用し難くほかに右認定を覆すに足りる証拠はない。右金額は原告会社の仮受金として計上すべきものである。なお、証人中原俊一(第二回)の証言および原告代表者本人尋問(第二回)の結果によれば、盛岡駅前の盧成永所有の建物を盛岡市の都市計画事業により買収され、その補償金として昭和二六年ごろから同三〇年ごろまで三回にわたつて交付された合計約一四〇万円を原告会社の事業に投じたことが認められないではないが、係争事業年度内に交付された補償金の額および事業に投じたとされる金額を確定するだけの資料はない。
仮受金(別途)
証人仁科誠三、同佐藤幹夫の証言によれば、被告が当該勘定科目に計上している金額は、被告が調査の結果に基づいて確定した昭和二七年二月二九日現在の資産と負債(当期利益金は公表金額を採用)の差額であり、これを便宜上別途仮受金として計上したものであることが認められる。本来資産と負債(当期利益金を除く)の差額は当期利益金を構成する訳であるが、公表金額の当期利益金を超えて、右差額を当期利益金として計上するには更にさかのぼつて期首の資産負債を確定する必要があるし、また、昭和二七年二月二九日現在の資産負債を確定するのは次期の所得計算上の必要のためにほかならないから右差額の性格は問題でない。しかして、右差額を仮受金として処理しても財産増減法による所得計算を不合理ならしめるものではない。そして、前記のように資産の合計は四四九万二六三七円であり、負債の合計(別途仮受金を除く)は後記のように四〇一万二四四二円となるから差引二三万九六一六円が別途仮受金として計上すべき金額となる。
借入金(銀行)
前記乙第一四二号証の一ないし一五、第四二三号証、成立に争いのない乙第一五三号証、第二四四号証の一ないし四、第四四二号証の二四、第四四三号証の四六、第四四四号証の一、二、九、証人仁科誠三の証言によれば、昭和二七年二月二九日現在興産相互銀行からの岩淵ツネ子名義の借入金五〇万円二口、弘前相互銀行盛岡支店から盧成永名義の借入金無尽一〇万円三口合計一三〇万円の借入金のあることが認められる。右借入金が実質的には原告会社の借入金とみるべきことについてはすでに判断したとおりである。
借入金(個人)
前記乙第一三八号証の六、八、第四二三号証、成立に争いのない第二〇五、第二六二、第四三〇号証、原告代表者本人尋問(第二回)の結果により成立を認める乙第一五四号証、証人仁科誠三の証言によれば、昭和二七年二月二九日現在松本幸雄からの昭和二六年一二月五日付岡村重孝名義の借入金五〇万円があり、この借入金は、原告会社の営業資金として借入れたもので実質的には原告会社の借入金であることが認められ、右認定に反する証人中原俊一(第一、二回)の証言、原告代表者本人尋問(第一、二回)の結果は前掲証拠に対比し信用し難く、ほかに右認定を覆すに足りる証拠はない。
資本金
前記乙第一〇号証、第一三八号証の六、第四二三号証、証人仁科誠三の証言によれば、原告会社の資本金は五二万円である(設立当初は二〇万円であつた)ことが認められる。原告は、現実には出資がなされなかつたと主張し、成立に争いのない甲第一五、第一六号証、乙第三三〇号証、証人全光鎬、同盧福永、同全尚鎬、同中原俊一(第一回)の証言、ならびに原告代表者本人尋問(第一回)の結果は右主張事実に符合するけれども、前掲証拠および成立に争いのない乙第三二六、第三二八、第三四七ないし第三四九号証、証人金洛竜の証言、原告代表者本人尋問(第二回)の結果によれば、現実に出資がなされていることを認め得るばかりでなく、前記認定のように原告会社が盧成永の個人事業を引継いでいるのであるから、現実に出資がなされたものとみるべきことは自明のことである。原告の主張に符合する前記各証拠は信用し難い。
法定準備金
前記乙第一三八号証の一四、第四二三号証、証人仁科誠三の証言によれば、原告作成の昭和二五年度分法人税確定申告書添付決算書の益金処分において、法定準備金五〇〇〇円が設定されていることが認められる。
税金引当金
前記乙第一三八号証の一四、第四二三号証、成立に争いのない乙第一五六ないし第一六七号証の各一、二、証人仁科誠三の証言によれば、原告作成の昭和二五年度分法人税確定申告書添付決算書の益金処分において、同年度税金引当金三万五〇〇〇円が設定されており、右引当金より取り崩される同二六年度に納付した法人税額および無申告加算税は別表三の当該勘定科目摘要欄記載の日時に納付した合計三万二五〇〇円のほか昭和二六年一一月二四日に一万七五〇〇円の法人税を納付していることが認められる。右事実によれば、昭和二六年度に納付した法人税額は五万円となり、税金引当金を取り崩してもなお一万五〇〇〇円の不足額が生ずる。本来税金引当金を超過する法人税一万五〇〇〇円は、所得計算上損金に計上できない(法人税法第九条第二項)から貸借対照表上資産に計上しなければならないものである(被告は、次事業年度以降の期末金額において、「損金に計上すべき法人税」という勘定科目を設け、税金引当金を超過する法人税を資産に計上していること後記のとおり)が、これを資産に計上することに修正しても、前記別途仮受金によつて調整されるので次事業年度以降の財産増減法による所得計算に影響を及ぼさない。したがつて、便宜上被告主張額税金引当金二五〇〇円をそのまま採用する。
当期利益金
前記乙第一三八号証の六、第四二三号証、証人仁科誠三の証言によれば、被告は昭和二七、二八年度の所得計算の必要上、原告作成の昭和二六年度確定申告書添付昭和二七年二月二九日現在の貸借対照表を調査の結果に基づいて修正し、前同日現在の資産負債を確定したが、その公表金額である当期利益金を修正するにはさらに期首財産を確定する必要があるので、右公表金額四八万〇一九五円をそのまま採用し、これを当期利益金として計上することにし、その結果生じる資産と負債(別途仮受金を除いた負債の合計)との差額を前記のように別途仮受金として処理したものであることが認められるが、前同日現在の資産負債を確定するのは、これを期首財産として、財産増減法による係争事業年度の所得計算をする必要に基づくにすぎず、別途仮受金の設定と相俟つてその所得計算を不合理ならしめることはないから相当として是認することができる。
以上昭和二七年二月二九日現在の負債の合計は四四九万二六三七円となる。
(五) 昭和二八年二月二八日現在の資産負債
(1) 資産
現金
原告会社においては、当日の各営業所の売上を本店に持参し、翌日に銀行に預金することを慣例としていたこと前記認定のとおりであるが、前記乙第四二三号証、成立に争いのない乙第一六九号証の一、二、証人仁科誠三によれば、昭和二八年三月一日には預け入れがなく、同月二日に三五万五〇〇〇円の預け入れがなされていることが認められる。右事実によれば、同年三月二日に、二日分の売上を預け入れたものと推認されるから、その二分の一の一七万七五〇〇円を期末現在高として計上するのが相当である。
銀行預金
前記乙第一二一ないし第一二三号証、第一二五号証の一ないし三、第一二六号証の一、二、第一二七号証の一ないし八、第一二八号証の一ないし七、第一二九号証の一ないし二四、第一三〇ないし第一三四、第一七六、第四二三号証、成立に争いのない乙第一七〇号証の一、二、第一七一ないし第一七三、第一七七ないし第一八三号証、第一八四号証の一、二、第一八五、第一八六号証、第一八七号証の一ないし四、第一八八号証の一ないし七、第四三五ないし第四三七号証、第四四二号証の六、七、一〇、一八、二〇、第四四五号証の一、二、第四四六、第四四七号証の各一ないし六、成立に争いのない乙第三八二号証により成立を認める乙第一七四号証、同第三七六号証により成立を認める乙第一七五号証の一ないし六、同第一八〇号証により成立を認める乙第一三五号証の二ないし一一、証人仁科誠三の証言によれば、昭和二八年二月二八日現在の原告会社の営業収益によつてなされている普通、当座、定期、無尽、無記名定期等銀行預金は併せて一一二六万八七八九円、未達小切手の金額は二〇万八〇七五円(内訳は、いずれも別表三の当該勘定科目摘要欄記載のとおり)であり、したがつて、差引期末金額は一一〇六万〇七一四円であること、右預金のうち上山忠一名義の普通および定期積金、同無記名定期のうち使用印鑑が岩淵、岡村以外のものはいずれも架空人名義の預金であることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
たな卸商品(景品)
前記乙第四二三号証、成立に争いのない乙第一八九、第一九〇号証、証人仁科誠三の証言によれば、昭和二八年二月二八日現在のパチンコ景品の在庫は二〇万円であることが認められる。期首金額九万〇二六三円は期中に全部消滅するものとみるのが相当であるから、右金額は繰り越さない。
たな卸商品(販売用パチンコ器)
前記乙第四二三号証、成立に争いのない乙第一九一、第一九二号証、右一九一号証によつて成立を認める乙第一九三号証、証人仁科誠三の証言によれば、原告会社は、期中の昭和二七年五月ごろからパチンコ器の製作を始めたが、期末現在の販売用パチンコ器の在庫は一五台、価額六万三〇〇〇円(単価四二〇〇円)であることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
たな卸商品(パチンコ器製作材料)
前記乙第一九二、第四二三号証、成立に争いのない乙第一九四号証、証人仁科誠三の証言によれば、昭和二八年二月二八日現在のパチンコ器の製作材料の在庫は三〇台分、価額八万八二三〇円(一台分二九四一円)であることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
たな卸商品(パチンコ玉)
前記乙第一三七、第四二三号証、成立に争いのない乙第一九五、第一九六号証、成立に争いのない乙第三五五号証により成立を認める乙第二一六号証の一、証人仁科誠三、同佐藤幹夫の証言によれば、昭和二八年二月二八日現在のパチンコ台数は、各営業所併せて三八〇台であり、一台当りのパチンコ玉の必要数量八〇〇個、パチンコ玉の単価は安くも一円二〇銭合計三六万四八〇〇円であることが認められ、前記乙第一九四号証のうち右認定に反する部分は信用し難くほかに右認定を覆すに足りる証拠はない。期首金額一二万三二〇〇円は期中に全部消滅したものとして取扱うべきものであるから、期末金額は三六万四八〇〇円である。
建物
前記乙第一三九、第一九五、第四二三号証、成立に争いのない乙第一九七、第二〇〇、第二〇一号証、右乙第二〇〇号証により成立を認める乙第一九九号証、右乙第一九八号証により成立を認める乙第二〇二、第二〇三号証、証人仁科誠三の証言によれば、当期増加額は、別表三の当該勘定科目摘要欄記載のとおり一七〇万六四〇〇円であり、前期繰越額は、期首金額一五万円と被告が期首において建物付属設備として計上していた四七万八〇四八円(本来、内容的には建物勘定に計上すべきものであるため当期において建物勘定に振替計上(原告の利益には影響がない)したもの)の合計六二万八〇四七円であることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はなく、当期減価償却費相当額は相当法条を適用し算出すると七万八二六五円となるから、差引期末金額は二二五万六一八二円となる。
建物附属設備
前記乙第四二三号証、成立に争いのない乙第二〇五号証、成立に争いのない乙第三七六号証により成立を認める乙第二〇四号証、前記乙第一二一、第一二三号証により成立を認める第二〇六号証の二、証人仁科誠三、同佐藤幹夫の証言によれば、原告会社は停電時用の自家用発電機を昭和二七年六月に一台一〇万円で、同二八年二月に一台八万八〇〇〇円で取得していることが認められ、右自家用発電機の当期減価償却費相当額は、相当法条を適用し算出すると八九七四円であり、期首金額四七万八〇四八円が建物勘定に振替計上されていること前記のとおりであるから、差引期末金額は一七万九〇二六円となる。
車両運搬具
前記乙第四二三号証、成立に争いのない乙第三八五号証により成立を認める乙第二〇七号証の一ないし六、成立に争いのない乙第一八九号証により成立を認める乙第二〇八号証の二、四、六、一〇、一三、証人仁科誠三、同佐藤幹夫の証言によれば、原告会社は、昭和二七年四月三輪貨物自動車(小型ダイハツ)一台を三六万円で取得していることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はなく、右当期増加額と前期繰越額二万三一七五円の合計三八万三一七五円、右の当期減価償却費相当額は相当法条を適用し算出すると一三万一九二〇円となるので、差引期末金額は二五万一二五五円となる。
備品(パチンコ器)
前記乙第一三七、第一三九、第一九二、第一九六、第四二三号証、証人仁科誠三の証言によれば、昭和二八年二月二八日現在の在庫のうち原告会社が当期中に増設したパチンコ台数は、駅前、本店、大三沢の各営業所併せて一八三台、そのうち一八〇台は自家製で一台原価四二〇〇円(物品税を加え時価四九〇〇円)、取得時期昭和二八年一月、その余の三台は外より単価五二〇〇円で購入したもので取得時期は同二七年三月、したがつて、当期増加額は八九万七六〇〇円となることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はなく、前期繰越額は五九万〇四七一円、当期減価償却費相当額は相当法条を適用し算出すると五一万五一〇〇円となるから、差引期末金額は九七万二九七一円となる。
備品(その他)
前記乙第四二三号証、成立に争いのない乙第二〇九号証の一ないし一二、二五ないし三〇、七七ないし九六、前記乙第一二一、第一二三号証により成立を認める乙第二〇九号証の一三ないし二三、二四の一、二、三一ないし七六、前記第一八九号証により成立を認める乙第二〇八号証の七、八、一一、一四、一五、一七、一八、二〇並びに証人仁科誠三、同佐藤幹夫の証言によれば、原告会社は昭和二七年九月拡声機一台二万五〇〇〇円で、同年六月扇風機四台一〇万七四〇〇円で、同年八月同じく扇風機三台六万九五〇〇円でそれぞれ取得しており、当期増加額は二〇万一九〇〇円となることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はなく、前期繰越額は二万四六二五円であり、当期減価償却費相当額は相当法条を適用し算出すると三万二五九一円となるので、差引期末金額は一九万三九三四円となる。
権利金
前記乙第二一〇、第四二三号証、成立に争いのない第二一一号証、証人仁科誠三の証言によれば、昭和二七年一二月ごろ、原告会社が青森県の大三沢に営業所を開設するに際し、店舗の貸主川村荘二に対し、右店舗の借用権利金一三万円を支払つていることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はなく、その当期減価償却費相当額は相当法条を適用し算出すると六五〇〇円となるから、差引期末金額は一二万三五〇〇円である。
未経過保険料
前記乙第一四五、第四二三号証、成立に争いのない乙第二一二号証、証人仁科誠三の証言によれば、岩淵ツネ子と日新火災海上保険株式会社との間に締結されている本店の建物の火災保険契約に基づき、当期において、保険期間昭和二八年二月六日から同二九年二月六日までの保険料二万八〇〇〇円(保険金二〇〇万円)を支払済みであり、したがつて、期末未到来の分の保険料は二万六三一二円となり、期首の未経過保険料は期日の経過により消滅したので差引期末金額は二万六三一二円となることが認められる。
損金に計上した法人税
前記乙第一三八号証の九、第四二三号証、成立に争いのない乙第一五九、第一六〇号証の各一、証人仁科誠三の証言によれば、昭和二七年度に納付した法人税額は二一万三二四〇円(内訳は別表三の当該勘定科目摘要欄記載のとおり)であり、他方、原告提出の昭和二六年度法人税確定申告書添付決算書(益金処分案)により税金引当金二〇万円が設定されていることが認められ、前期繰越税金引当金が二五〇〇円であることは前記認定のとおりである。右納付した法人税額と税金引当金との差額一万〇七四〇円は、税務計算上資産科目に計上しなければならない(その理由は前期税金引当金において判断したとおりである)。
売掛金、仮払金、予納金
前記乙第一三六、第四二三号証、証人仁科誠三の証言によれば、期首金額はいずれも当期中に整理されたことが認められる。
以上昭和二八年二月二八日現在の資産の合計は一五九六万八一六四円となる。
(2) 負債
買掛金
前記乙第一三六、第一三七、第二一三、第四二三号証、成立に争いのない乙第二一四号証、前記乙第一二一、第一二三号証により成立を認める乙第二〇六号証の三ないし九、一一ないし一三、証人仁科誠三の証言によれば、期首の買掛金は期中に消滅し、昭和二八年二月二八日現在の買掛金は六七万八〇七四円(内訳は別表三の当該勘定科目摘要欄記載のとおり)となることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
未払金
前記乙第一一九、第一九八、第二〇一ないし第二〇三号証、第二一五、第二一七号証の各一、二、第四二三号証、成立に争いのない乙第三五五号証により成立を認める乙第二一六号証の一、二、成立に争いのない乙第三六五号証により成立を認める乙第二一八号証の一、二、証人仁科誠三の証言によれば、昭和二八年二月二八日現在の未払金は一八三万〇一三三円(内訳は別表三の当該勘定科目摘要欄記載のとおりで前期繰越額七万五〇〇〇円含む)であることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
未払税金
前記乙第一四七、第一九六、第四二三号証、成立に争いのない乙第二一九ないし第二二八号証の各一、二、証人仁科誠三の証言によれば、期首金額一一万六五四一円は期中納付済みで消滅し、期末未納税額は、物品税が三〇万三二八〇円、娯楽施設利用税が三七万八五八一円合計六八万一八六一円であることが認められる。
未払利息
前記乙第一四二号証の五、第一四三号証、第四二三号証、証人仁科誠三の証言によれば、期首未払利息は、利息支払日が到来して支払済みとなつており、期末現在の未払利息額は、期首と同一の借入金五〇万円につき、日歩三銭三厘の利率による昭和二八年一月一日から同年二月二八日までの利息九七三五円存することが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
仮受金(岡村重孝)
前記乙第一二三、第一四八ないし第一五二、第一九四号証、第四二三号証、証人仁科誠三の証言によれば、盧成永は前記認定の手持現金のうち八〇万円を当期において原告会社の事業に投じているほか、同人の許在九に対する売掛金および融資金について、右訴外人が代物弁済として提供した玉売機時価三〇万円および同人が所有していた包装機一台の売却代金一〇万合計四〇万円を原告会社の事業に投じていることが認められる。右認定に反する証拠は期首仮受金(岡村重孝)におけると同じでありいずれも信用できない。右当期増加金額に前期繰越額九〇万円を加算すると期末現在の仮受金は二一〇万円となる。
仮受金(別途)
当該勘定科目の性格上、当期において増減を生じない。
借入金(銀行)
前記乙第一四二号証の二、五、第一五三、第四二三号証、第四四四号証の一、二、九、証人仁科誠三の証言によれば、期首借入金一三〇万円のうち興産相互銀行本店からの岩淵ツネ子名義の借入金一口五〇万円は、昭和二七年六月二三日に返済されたが、その余の期首借入金は期末現在そのまま継続し、差引残高は八〇万円であることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
借入金(個人)
前記乙第一四一号証の五、第一五四、第一九四、第一九七、第四二三号証、成立に争いのない乙第二三〇、第二三一号証、証人仁科誠三の証言によれば、期首借入金はそのまま継続しているほか当期において新たに豊川光彦こと全光鎬より五〇万円の借入金があり、期末現在高が一〇〇万円となることが認められる。当期増加額について右の認定に反する証人全光鎬、同中原俊一(第二回)の証言は前掲証拠に照らし信用できず、ほかに右認定を覆すに足りる証拠はない。
事業税引当金
国税庁長官の通達(昭和二六年直法一―四二の一、同二)によれば前事業年度分に対する事業税は法人がこれを損金に計上しているといないとにかかわらず損金に算入するものとされ、この場合に、当該事業年度において未だ前事業年度分の事業税の決定がなされていないときは、当該事業税は前事業年度の所得金額に標準税率を乗じた金額とされている。本件において前事業年度すなわち昭和二六年度の所得金額は、原告作成の右年度の法人税確定申告書(前記乙第一三八号証の一)の記載によれば四九万七六九五円であるからこれに対する当時の標準税率一二%を乗じると計算上五万九七一〇円となり、右金額が事業税引当金として計上されるべき金額となる。
資本金
前記乙第一〇、第四二三号証、証人仁科誠三の証言によれば、当期において増減がないことが認められる。
法定準備金
前記乙第一三八号証の九、第四二三号証、証人仁科誠三の証言によれば、原告作成の昭和二六年度法人税確定申告書添付決算書(益金処分案)により、法定準備金四万八〇〇〇円設定されていることが認められ、前期繰越額五〇〇〇円と併せると期末金額は五万三〇〇〇円となる。
前期繰越利益金
前期の当期利益金は、四八万〇一九五円であること前記判断のとおりであるが、前記乙第一三八号証の九、第四二三号証、証人仁科誠三の証言によれば、右利益金の処分は法定準備金四万八〇〇〇円、税金引当金二〇万円(以上前記認定のとおり)のほか、賞与五万円、株主配当金五万二〇〇〇円となつていることが認められ、差引期末金額は一三万〇一九五円となる。
当期利益金
昭和二八年二月二八日現在の資産の合計が一五九六万八一六四円であり、当期利益利金を除く負債の合計が八〇八万四八二四円となるから、その差額七八八万三三四〇円が当期利益金である。
仮受金
前記乙第一三六、第四二三号証、証人仁科誠三の証言によれば、期首仮受金三六万二〇〇〇円は期中に整理されたことが認められる。
以上昭和二八年二月二八日現在の負債の合計は一五九六万八一六四円となる。
(六) 昭和二九年二月二八日現在の資産負債
(1) 資産
現金
原告会社においては、当日の各営業所の売上を翌日銀行に預金することが慣例となつていたことは前記認定のとおりであるところ、前記乙第四二三号証、成立に争いのない乙第二三三号証の二、五、第二三四ないし第二三七号証の各一、二、第二三八号証の一ないし三、第四四二号証の一一、二二、二七ないし二九、証人仁科誠三の証言によれば、昭和二九年三月一日の銀行預金預入れ額は三九万八五六〇円であることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はなく、したがつて、原告会社の現金期末現在高は三九万八五六〇円であるといわなければならない。
銀行預金
前記乙第一二一、第一二三号証、第一二五号証の一ないし三、第一二六号証の一、二、第一二七号証の一ないし八、第一二九号証の一ないし二四、第一三〇ないし第一三四号証、第一三五号証の一ないし一七、第一七〇号証の一、二、第一七一ないし第一七四号証、第一七五号証の一ないし六、第一七六ないし第一八三号証、第一八四号証の一、二、第一八五、第一八六号証、第一八七号証の一ないし四、第一八八号証、第二三六、第二三七号証の各一、二、第二三八号証の一ないし三、第四二三号証、成立に争いのない乙第二三三号証の三、第二三九号証の一、二、第二四〇号証の一ないし五、第二四一、第二四二号証、第二四三号証の一ないし三、第二四四号証の一ないし四、第二四五ないし第二四七、第二五〇、第四三五ないし第四三七号証、第四四二号証の七ないし二一、第四四三号証の一ないし一六、第四四六号証の一ないし六、第四四七号証の一ないし一一、成立に争いのない乙第三七六号証により成立を認める乙第二四八号証の一、二、第二四九号証、第二五一号証の一、二、成立に争いのない乙第四二四号証によつて成立を認める乙第二五二号証の一、二、証人仁科誠三の証言によれば、原告会社の営業収益による昭和二九年二月二八日現在の普通、定期、当座、無尽、無記名定期等銀行預金は併せて合計二〇六三万四三〇四円、右金額から控除すべき期末現在の未達小切手の金額は一〇九万三六二〇円(内訳はいずれも別表三の当該勘定科目摘要欄記載のとおり)であり、差引期末金額は一九五四万〇六八四円(被告主張額は一九五四万〇六八五円であるが計算の誤りと認められる)であること、右預金のうち上山忠一名義普通および定期預金、林賢二郎名義の当座預金、同無記名定期のうち使用印鑑が岡村以外のものは架空人名義の預金であることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
売掛金
前記乙第一三七、第一七二、第二三一、第四二三、第四三〇号証、成立に争いのない乙第二五三号証、第二五四号証の三ないし一一、第二五五号証の一ないし一〇、第四一七号証、証人仁科誠三の証言によれば、原告会社は、景品の仕入れを昭和二八年六月ごろから岩手県遊技場協同組合、同年一〇月ごろから東洋物産株式会社の名称で行なつてきたものであり、いわば右会社は、原告会社の仕入部門であるが、右組合、会社には原告会社以外の外部に対しても売上があり、昭和二九年二月二八日現在の売上金は三九万八四四三円であることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
貸付金
前記乙第二一〇、第二五九、第四二三号証、成立に争いのない乙第二五八号証、証人仁科誠三、同佐藤幹夫の証言によれば、盧成永は、当期において原告会社の資金から同人の弟岡村重男こと盧福永に対し一二〇万円融資していることが認められ、右認定に反する乙第一九四号証は信用できず、ほかに右認定を覆すに足りを証拠はない。
仮払金
前記乙第一二三、第一三四、第四二三号証、成立に争いのない第二五六号証、成立に争いのない三七一号証により成立を認める乙第二五七号証、証人仁科誠三、同佐藤幹夫の証言によれば、盧成永は当期において、岩淵ツネ子が盛岡文化プレイガイド社に出資する自動車の代金三五万円のうち二二万円を原告会社の資金から仮払していることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。したがつて、期末金額は二二万円である。
たな卸高(パチンコ景品)
前記乙第一三六、第一七二、第一九〇、第二五三、第四二三号証、成立に争いのない乙第二五四号証の二ないし三九、第二五五号証の一ないし二一、第二六〇号証の一、右二六〇号証の一により成立を認める同号証の二、成立に争いのない乙第二六一ないし第二六三号証、第二六四、第二六五号証の各一、二、第二六六号証の一ないし六、第二六七号証の一ないし四〇、第二六八号証の一ないし一五、第二六九号証の一ないし四、第二七〇号証の一、二、証人仁科誠三の証言によれば、昭和二九年二月二八日現在の在庫は前記認定のように原告会社の仕入部というべき東洋物産株式会社関係と営業所関係併せて三三八万三二五一円(内訳は別表三の当該勘定科目摘要欄記載のとおり、なお、右記載中の仕入部とは右会社を指す)であることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。なお、期首金額二〇万円が期中に消滅したものとみるべき点については前期と同様である。
たな卸高(販売用パチンコ器)
前記乙第一九一、第一九二、第四二三号証、証人仁科誠三の証言によれば、昭和二九年二月二八日現在の在庫は四〇台、価額一七万二〇〇〇円(単価四三〇〇円)であることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。なお、期首金額六万三〇〇〇円が期中に消滅したものとみるべき点については前期と同様である。
たな卸高(パチンコ器製作材料)
前記乙第一九二、第一九四、第四二三号証、証人仁科誠三の証言によれば、昭和二九年二月二八日現在の在庫は一〇〇台分、価額二九万四一〇〇円(一台当り二九四一円)であることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。なお、期首金額八万八二三〇円が期中に消滅したとみるべき点については前期と同様である。
たな卸高(パチンコ玉)
前記乙第一三七、第一九五、第一九六号証、第二一六号証の一、第四二三号証、証人仁科誠三、同佐藤幹夫の証言によれば、昭和二九年二月二八日現在の在庫は、パチンコ台数が五八一台であり、一台当りのパチンコ玉必要数量一〇〇〇個であるからパチンコ玉五八万一〇〇〇個、玉の単価一円二〇銭として価額六九万七二〇〇円であることが認められ、価額につき、右認定と異なる乙第一九四号証は信用し難くほかに右認定を覆すに足りる証拠はない。期首金額三六万四八〇〇円が期中に消滅したとみるべき点については前期と同様である。
土地
前記乙第一七三、第四二三号証、成立に争いのない第二七一ないし第二七六号証、第二七七号証の一ないし三、第三三〇号証、第三四六号証の四、成立に争いのない乙第三九〇号証により成立を認める乙第三七八号証、証人中原俊一(第一回)、同仁科誠三の証言によれば、昭和二八年五月に、東洋物産有限会社が盛岡市内九五七番の三一宅地八五坪五勺を立花英吉外五名から代金四一五万円で買い受けているが、右土地は、売主が第三国人である盧成永への売渡を嫌忌したので、盧成永が石川利一と共同で右会社を設立(代表取締役は石川利一)し、右会社名義で取得したものであり、右土地の代金は、原告会社の資金から出ていること、右会社は当時何らの事業もしていないことが認められ、前掲乙第一七三、第二七一ないし第二七四号証のうち右認定に反する部分は信用し難くほかに右認定を覆すに足りる証拠はない。しかして、右土地の取得価額は、右土地が原告会社に帰属するものとして資産に計上するのが相当である。成立に争いのない甲第一一ないし第一四号証によれば、右会社が右土地に関し、訴訟当事者となつていることが認められるが、右判断を覆すに足りず、また、前記事実からすれば仮払金として資産に計上することも許される場合であるから、いずれにしても所得計算上不合理を生じない。
建物
前記乙第一三九、第一九七、第一九九、第二〇〇、第二六二、第二六三、第四二三号証、成立に争いのない乙第二七九ないし第二八二、第四一九、第四五四、第四五五号証、前記乙第一九七号証により成立を認める乙第二八三号証、証人中原俊一(第一、二回)、同仁科誠三、同佐藤幹夫の証言ならびに原告代表者本人尋問(第一、二回)の結果によれば、当期において別表三の当該勘定科目摘要欄記載の建物を同欄記載の価額で買受け、或いは改築しており、当期増加額が五九三万五〇七一円となることが認められ、前掲乙第二六三号証、第四一九号証のうち右認定に反する部分は信用し難く、ほかに右認定を覆すに足りる証拠はない。そして、前期繰越額は二二五万六一八二円であり、当期減価償却費相当額は相当法条を適用し算出すると三四万九三九一円となるから、差引期末金額は七八四万一八六二円となる。
建物附属設備
前記乙第四二三号証、乙第二〇九号証の一五、四九、六一、七六、成立に争いのない第二八四号証の一、二、証人仁科誠三、同佐藤幹夫の証言によれば、昭和二九年二月に堅形水冷発電機を一二万九二一五円で取得していることが認められ、前記繰越額が一七万九〇二六円であり、当期減価償却費相当額は相当法条を適用し算出すると二万〇六八六円となるから、差引期末金額は二八万七五五五円となる。
車両
前記乙第一四一号証の三、第一四二号証の一二、第二〇七号証の一ないし六、第二〇九号証の六二、第二六二、第四二三号証、成立に争いのない乙第二八五、第二八六号証、右乙第二八五号証により成立を認める乙第二八七号証の一ないし四、証人仁科誠三、同佐藤幹夫の証言によれば、昭和二八年八月および九月に三輪貨物自動車各一台を各四六万円で、同二九年二月に普通乗用自動車(フオード)を一台一三四万八七五〇円でそれぞれ取得しており、前期繰越分のうち三輪貨物自動車は当期に売却(下取り)したことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。右売却車両の前期末未償却残高は、計算上二三万八二三〇円となるから前期繰越額二五万一二五五円から右金額を控除し、また、当期減価償却費相当額は相当法条を適用し算出すると二三万九五八八円となるから、差引期末金額は結局二〇四万二一八七円となる。
備品(パチンコ器)
前記乙第一三七、第一九二、第一九六、第四二三号証、証人仁科誠三の証言によれば、昭和二九年二月二八日現在のパチンコ台数は、本店、駅前、本町、柳新道、大三沢の営業所を併せて五八一台であり、そのうち期中増設分は三九八台(うち一九七台は法定耐用年数二年を経過した昭和二六年三月設置のパチンコ器との入替分)、価額一九九万円(一台当り原価四三〇〇円、物品税七〇〇円)であることが認められ、前期繰越額九七万二九七一円、右金額から控除すべき右耐用年数を経過した一九七台の残存価額は計算上一八万六五八九円、また、当期減価償却費相当額は相当法条を適用し算出すると一四三万二二一五円となるから、差引期末金額は一三四万四一六七円となる。
備品(その他)
前記第四二三号証、証人仁科誠三の証言により成立を認める乙第二八九号証の一ないし五、第二九〇号証の一ないし三、第二九一号証の一、二、第二九二号証、証人仁科誠三、同佐藤幹夫の証言によれば、原告会社は、昭和二八年六月に扇風機四台一〇万一八七五円、同年一二月に換気扇六万三七〇〇円、同年九月に玉台二台一〇万円、同年一二月に玉台一台一二万円、同二九年一月に玉台一台一四万五〇〇〇円でそれぞれ取得しており、また、同二八年九月ネオン追加工事をなし二七万一三七〇円の費用を要したことが認められ、前期繰越額一九万三九三四円、当期減価償却費相当額は相当法条を適用し算出すると一五万七七三七円となるから、差引期末金額は八三万八一四二円である。
権利金(借家権)
前記乙第四二三号証、証人仁科誠三の証言によれば、当期増加金額はない。期首権利金の当期減価償却費相当額は、相当法条を適用し算出すると二万六〇〇〇円となるから、差引期末金額は九万七五〇〇円となる。
電話加入権
前記乙第二七九ないし第二八一、第四二三号証、証人仁科誠三の証言によれば、当期において電話加入権二口、六万一五〇〇円で取得していることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はなく、電話加入権は償却資産ではないから期末金額は六万一五〇〇円である。
未経過利息
前記乙第一四二、第一四三、第四二三号証、成立に争いのない乙第二九三号証の一ないし四、証人仁科誠三の証言によれば、昭和二九年二月二八日現在別表三の当該勘定科目摘要欄記載の内容の借入金につき同欄記載のように合計一万三四四四円の未経過利息のあることが認められる。
未経過保険料
前記乙第一四五、第四二三号証、成立に争いのない乙第二九四号証、証人仁科誠三の証言によれば、期首と同じく、岩淵ツネ子と大東京火災海上保険株式会社との間に締結されている本店営業所の建物の火災保険契約に基づき、当期において、保険期間昭和二八年九月一六日から同二九年九月一六日までの保険料二万六〇〇〇円(保険金二〇〇万円)を支払済であり、したがつて当期末未到来の分の保険料は一万四三〇一円となることが認められ、期首金額二万六三一二円は期間の到来により消滅しているので差引期末金額は一万四三〇一円である。
損金に計上した法人税
前記乙第四二三号証、成立に争いのない乙第一六一号証の二、証人仁科誠三の証言によれば、当期において昭和二七年度分法人税五万円が納付されているが、他方前期利益金の処分がなされず税金引当金が設定されていないことが認められ、したがつて、前期繰越額一万〇七四〇円と併せると期末金額は六万〇七四〇円となる。
以上昭和二九年二月二八日現在の資産の合計は四三〇五万五六三六円(被告主張額は四三〇五万五六三七円、前記銀行預金の修正により誤差を生じたもの)となる。
(2) 負債
支払手形
前記乙第一三六号証、第一四二号証の一ないし一五、第二九三号証の一ないし三、第四二三号証、成立に争いのない乙第二九五号証の一、二、証人仁科誠三の証言によれば、昭和二九年二月二八日現在の原告会社の支払手形金額残高は八五万二一二七円(内訳は別表三の当該勘定科目摘要欄記載のとおり)であることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
買掛金
前記乙第二〇九号証の二三、二四の一、二、五七ないし五九、七四、七五、第二一三号証、第二六七号証の一ないし四、第四二三号証、以下いずれも成立に争いのない乙第三九三号証により成立を認める乙第二九六号証の一ないし三、乙第三九四号証により成立を認める乙第二九七号証の一、二、乙第三九五号証により成立を認める乙第二九八号証の一、二、乙第三九六号証により成立を認める乙第二九九号証の一、二、乙第三九七号証により成立を認める乙第三〇〇号証の一ないし一〇、乙第三九八号証により成立を認める乙第三〇一号証の一ないし四、乙第三九九号証により成立を認める乙第三〇二号証の一ないし四、乙第四〇〇号証により成立を認める乙第三〇四号証の一ないし四、乙第四〇一号証により成立を認める乙第三〇五号証の一ないし三、乙第四〇二号証により成立を認める乙第三〇六号証の一、二、証人仁科誠三の証言によれば、昭和二九年二月二八日現在の原告会社の買掛金は、二五一万〇九〇七円(内訳は別表三の当該勘定科目摘要欄記載のとおり)であることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
未払金
前記乙第一一九号証、第二〇九号証の四五ないし四七、九五、九六、第二一五、第二一六号証の各一、二、第二一七号証、第二一八、第三〇七号証の各一、二、第三〇八号証の一ないし三、第三〇九、第三一〇号証の一、二、第三一二号証の一ないし五、第三一三号証の一、二、第三一四号証の一ないし五、第三一六、第一八号証の各一、二、第三二一号証の一ないし三、第三二二号証の一、二、第四二三号証、以下、いずれも成立に争いのない乙第四〇七号証により成立を認める乙第三一一号証の一ないし三、乙第三七七号証により成立を認める乙第三一五号証の一ないし三、乙第三五七号証により成立を認める乙第三一七号証の一、二、乙第四一二号証により成立を認める乙第三一九号証の一、二、乙第三六四号証により成立を認める乙第三二〇号証の一ないし三、証人仁科誠三の証言によれば、昭和二九年二月二八日現在の原告会社の未払金は一六六万九六五八円(内訳は別表三の当該勘定科目摘要欄記載のとおり)であることが認められ、右認定を覆すにたりる証拠はない。
未払税金
前記乙第一一五、第一四七、第一九六号証、第二一九ないし第二二八号証の各一、二、第四二三号証、成立に争いのない乙第三二三号証の一ないし三、証人仁科誠三の証言によれば、昭和二九年二月二八日現在の原告会社の未納入場税、未納物品税の額は合計一八二万四〇〇六円(内訳は別表三の当該勘定科目摘要欄記載のとおり)であることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
仮受金
当期における新たな仮受金の発生を認めるに足る資料はなく、前期繰越額二一〇万円が期末現在高である。
仮受金(別途)
当該勘定科目の性格上当期において増減を生じない。
借入金(銀行)
前記乙第一四二号証の一ないし一五、第一五三号証、第二九三号証の一ないし四、第 二三号証、証人仁科誠三の証言によれば、昭和二九年二月二八日現在の原告会社の銀行からの借入金は、林賢二郎(架空)名義の借入金一口二〇万円、岩淵ツネ子名義の借入金二口二〇〇万円、岡村重孝名義の借入金三口三一五万六〇〇〇円、東洋物産株式会社名義一口三〇万円、東洋物産有限会社名義の借入金一口一八〇万円(右両会社は、当時何ら事業をしていなかつたのであるから、右借入金は実質的には、原告会社のものとみられるばかりでなく、原告会社の資産に計上する方が原告に有利)合計七四五万六〇〇〇円であることが認められる。
借入金(個人)
前記乙第二三一、第四二三号証、成立に争いのない乙第三二四ないし第三二八号証、右第三二八号証により成立を認める乙第三二九号証、証人仁科誠三の証言によれば、原告会社には当期において大山春吉から一〇〇万円、佐藤晏太等パチンコ製作関係従業員から六〇万円合計一六〇万円の新たな借入金があり、前期繰越額一〇〇万は当期も継続し期末金額が二六〇万円であることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
事業税引当金
昭和二七年度の決定所得金額が七一七万三三〇〇円であることは当事者間に争いがなく、前期同様税率一二%を右金額に乗ずると八六万〇七九〇円となり、前期繰越額五万九七一〇円と併せて期末金額は九二万〇五〇〇円となる。
資本金
前記乙第一〇号証、第四二三号証、証人仁科誠三の証言によれば、当期において増減がないことが認められる。
法定準備金
前記乙第四二三号証、証人仁科誠三の証言によれば、昭和二七年度の利益金について利益処分がなされていないことが認められ、したがつて法定準備金は設定されていない。しかして、期末金額は前期繰越額五万三〇〇〇円である。
前期繰越利益金
期首前期繰越金一三万〇一九五円と期首当期利益金七八八万三三四〇円(前期利益金について利益処分がなされていないことは前記のとおり)の合計金額である。
当期利益金
昭和二九年二月二八日現在の資産の合計が四三〇五万五六三六円であり、当期利益を除く負債の合計が二八七四万一八四九円であるからその差額一四三一万三七八七円(被告主張額一四三一万三七八八円)が当期利益金である。
以上負債の合計は四三〇五万五六三六円(被告主張額四三〇五万五六三七円)となる。
(七) 以上検討の結果、原告の昭和二七年度の所得金額は七八八万三三四〇円(昭和二八年二月二八日現在の当期利益金)、同二八年度の所得金額は一四三一万三七八七円(昭和二九年二月二八日現在の当期利益金)となり、本件課税処分における決定所得金額すなわち昭和二七年度七一七万三三〇〇円、同二八年度一二一一万八三〇〇円をいずれも上回る所得があつたというべきであるから、右両年度の本件法人税額決定処分は何らの瑕疵がなく適法といわねばならない。
(八) 本件無申告加算税額、重加算税額決定処分について判断するに、前記認定のように、原告会社の営業収益による預金の大部分が盧成永、岩淵ツネ子等個人名義か架空人名義の預金となつているほか成立に争いのない乙第三三七ないし第三四四号証、第三四六号証の一の一ないし六、第三四六号証の二、第三五〇ないし第三五三号証、証人仁科誠三、同中原俊一(第一回)の証言によれば、原告は、昭和二五、および二六年度については法人税の確定申告書を提出していたのに、同二七および二八年度については、右確定申告をしないで、昭和二九年三月一五日に至り盛岡税務署長に対し、法人税を免れる目的をもつて原告会社の所得を盧成永、中原俊一、豊川光彦三名の個人名義に分割した昭和二八年分(同二八年一月一日から同年一二月三一日まで)の所得税確定申告書を提出し、また、税務当局による査察着手後財産の隠匿のため類家邦庸より同二八年八月に金五五〇万円借受けた旨の架空の借入金工作を施していたことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はなく、原告は税額の基礎となるべき事実を隠べい仮装し、その隠ぺい仮装したところに基づいて昭和二七および二八年度の確定申告書を提出しなかつたことが明らかであるから、別表四(同表中昭和二七年度の中間申告額(法人税法第一九条一項、六項)は、前記乙第一六〇号証の一、二により一〇万四四九〇円と認められ、昭和二八年度の中間申告額は国税庁長官通達(基通三二八)により五万二二四〇円となる)記載のように相当法条、税率を適用してなした本件無申告加算税、重加算税決定処分もいずれも適法といわねばならない。
三、よつて、本件課税処分はいずれも適法であり、これを違法として第一次にその無効確認を求め、予備的にその取消を求める原告の本訴請求はいずれも理由がないから失当としてこれを棄却することとし、訴訟費用の負担については民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 石川良雄 裁判官 田辺康次 裁判官 佐々木寅男)
別表 一
<省略>
別表二
修正貸借対照表
借方の部
<省略>
貸方の部
<省略>
別表 三
一、昭和二七年二月二九日現在
<省略>
二、昭和二八年二月二八日現在
<省略>
三、昭和二九年二月二八日現在
<省略>
別表 四
法人税決定の根基
自昭和二七年三月 一日 至昭和二八年二月二八日 事業年度分
<省略>
自昭和二八年三月 一日 至昭和二九年二月二八日 事業年度分
<省略>